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加藤のコラム

加藤のコラム第182号

引退の美学

 

先回は散り際がはかない桜がテーマでした。

今回は散り際つながりで、引退をテーマにウダウダと書きます。

 

どの業界のどんな人でも、その実績の大小にかかわらず、引退の時は万人に訪れます。どう引退するかはその人の人生観ですから他の人がチャチャを入れることでもないです。美学はそれぞれにあっていいので。それに、諸事情から、引退したくても引退できない人もいるでしょうし、引退したくなくても引退せざるを得ない人もいるでしょう。そう考えれば、自分で引退の時を決められる人は幸福度が高いと言えるかもしれません。

 

では、引退の形を勝手に5分類したので、発表いたします。

 

その1 桜タイプ

まだ咲いていてくださいよと周囲が思う中、パーっと去っていく形。桜自体はまた翌年ちゃんと咲きますが、厳密な見方をするとそれはまったく同じ桜ではないので、本人の跡をまったく残さないで去っていくのが桜タイプ。人々の記憶の中に残り続けるという、おそらく日本人が一番しびれる引退の形でしょう。山口百恵さんがまさにこの形だと思われます。

 

その2 早急タイプ

「早急」…何と読みますか? 「そうきゅう」? それとも「さっきゅう」? 本来は「さっきゅう」と読むものでしたが、今では「そうきゅう」と読むことがとても多くなりました。「早急」という漢字やその意味自体は変わらないけれど読み方が変わって漢字業界に貢献を続けている熟語です。つまり、引退後に、立場やかかわり方を変えながら同じ業界に貢献していく形が早急タイプ。プロスポーツ選手が引退し指導者や解説者としてその業界の発展に携わるのがこの形だと思われます。

 

その3 宇宙戦艦ヤマトタイプ

宇宙戦艦ヤマトと聞いて、それをイメージできる人が何人いるのだろうか…。第二次世界大戦で沈没した戦艦大和は2199年に宇宙戦艦ヤマトとして復活し、地球を救う唯一の方法である放射能除去装置を手に入れるためイスカンダル星へと向かいます。何らかの事情で一度その業界を去るものの鮮やかに復活し、より活躍の場を広げる形が宇宙戦艦ヤマトタイプ。ヒロミさんや元キャンディーズの伊藤蘭さんがその代表例でしょうかねえ。

 

その4 古民家カフェタイプ

家としては引退するけれどカフェとしてはその味わいを生かして新たな人生を歩んでいる古民家が多々あるようです。古民家だからこその転生です。つまり、別業界で転生する形が古民家カフェタイプ。古民家と言うのは失礼かもしれませんが、元スポーツ選手のセカンドキャリアの成功例としては長嶋一茂さんが思い浮かびます。

 

その5 祭りの後タイプ

お祭りで盛り上がった翌日の街は、それが幻だったような静けさになるものです。祭りの参加者には別の日常がまた始まりますから。華々しい活躍をされた方々であっても、とある理由で世間からのバッシングを受けてしまい、表舞台から突然消えていくことがあります。それが祭りの後タイプ。このタイプの代表例は…出せません。みなさんで勝手に思い浮かべてください。

 

個人的には桜タイプになることが願望ですが、そもそも自分で引退の時を決められるほどの人間でもないので、風に吹かれるまま水の流れに身を委ねるまま、細々と生きていくしかありません。それに、ダメなところが山のようにありますので、祭りの後タイプに一番近いところにいるのではないかと思っております。

 

祭りのように盛り上がった実績もなく、細々とだけ生きていて、でも人知れず突然いなくなるという「タイプその6 まだあるかと思っていた残り少ないボックスティッシュの最後の一枚タイプ」を自分のために創設して、加藤は生きていきます。

 

自閉症者地域生活支援センターなないろ  加藤 潔