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加藤のコラム

加藤のコラム第107号

個人因子と環境因子 

 

障がい福祉や特別支援教育の業界では、人がその力を発揮するために影響を与えるのは個人因子と環境因子だと言われています。特に環境因子は大きな影響を与えると言えます。だって、障がいはその人と環境との相互作用によって生きにくくなるかどうかが決まるので、環境の側からまず歩み寄っていくことに支援の真髄があるわけです。

 

個人因子と環境因子のことって、障がい分野だけの話ではなくて、どの分野でもあてはまる話ですね。

たとえば、スポーツ選手が、このチームでは活躍していたのに違うチームに移ったらパッとしなかったなんてことはよくある話ですが、ケガをしたとか突然へたくそになったとかでなければ個人因子は特に変わっていないわけですから、環境因子が変わったことによってパフォーマンスが落ちてしまったという説明ができます。

 

環境因子なんてまったく関係ないくらい個人因子がものすごい人ならどんな環境に身を置こうがいいパフォーマンスを出し続けられるのでしょうが、多くの場合、自分にとっていい環境を見つければパフォーマンスがもっと上がるはずだと考えるものです。それは当然の感情です。環境因子がいい影響を及ぼしていれば、個人因子もちょっと骨太になってくるかもしれませんし。

 

でも、自分にとっていい環境を見つける作業はなかなかめんどうだと思いますよ。だって、外から見ただけでその環境が自分に合っているかどうかなんてわかるはずないですもん。いいなと思っていたけれどいざ入ってみたら全然違ったなんてことは珍しくもない話です。

 

ボクの個人的見解なのですが、ここは絶対ダメだなと感じる環境なら離れた方がいいですけれど(環境因子が悪影響を与えているということだから)、気を遣ってくれているなとか配慮されているなとかだれかが認めてくれているなと感じられる環境だったら離れる必要がないというか、それ以上の環境に出会う確率は低いような気がしています。根拠とか確固たるデータがあるわけではないですけど、自分が生きてきて、そして人さまの様子も見てきて、そう思うのであります。

 

次はもっと輝かしい場所に行けると思うのも権利。でも、今の場所が悪くないなら、その場所で個人因子をちょっと高めてみようとするのもありだよなと思っちゃうのでした。個人因子と環境因子の合わせ技で人のパフォーマンスが決まるわけだから、環境因子を下げるかもしれない選択をしないという判断も尊いことだと思うのです。

 

プロ野球はフリーエージェントの時期だし、某芸能事務所では退所して違うところに移る人もたくさんいるし、環境因子を変えてうまくいく人たちがいるのは事実ですが、環境因子を変えないほうがうまくいく人たちが世の中にたくさんいるのも事実。

環境を変えないという決断をしている人って、一般人であればそれをだれかに宣言する機会がそうそうあるわけではないですよね。でも、そういう静かな決断をちゃんとしている人たちにもエールを送りたいなと思っている加藤でした。

 

自閉症者地域生活支援センターなないろ  加藤 潔